CGキャラを実写合成できる『Wonder Studio』とは?料金や機能について解説
映像制作の世界が、AI技術の進化により大きな変革を遂げています。その最前線に立つのが、実写の人間を簡単にCGキャラに置き換えることができる『Wonder Studio』です。
この記事では、Wonder Studioの機能やメリット、注意点、料金プラン、活用シーンなどについて詳しく解説します。映像制作のプロフェッショナルから初心者まで、Wonder Studioを使って映像制作の可能性を広げたいすべての人に向けて、その魅力と活用方法を伝えます。一緒に新たな映像制作の世界を探求しましょう。
Wonder Studioとは?
Wonder Studioは、CGキャラクターを実写シーンの人物に置き換えて、合成することができるAIツールです。アメリカのスタートアップ企業、Wonder Dynamicsが提供するAI動画サービスとなっています。
Wonder Studioは、実写映像から簡単に3DCG合成を作成することが可能で、映像制作の新たな可能性を広げるツールとして注目を集めています。
高価なモーションキャプチャー機材や複雑な3Dソフトウェア、高価な制作用ハードウェアは必要なく、Wonder Studioに必要なのはカメラとパソコンだけです。
プラットフォームはクラウドベースなので、利用可能なハードウェアに制限されることはなく、Wonder Studioでプロジェクトの処理を開始したら、ブラウザを閉じたり、パソコンの電源を切ることもできます。
Wonder Studioは、1台のカメラからの映像に基づいて自動的にカットを検出し、ビデオ全体を通してアクターの演技を追跡します。そして、追跡した映像からモーションキャプチャーのデータに落とし込み、CGのキャラクターと組み合わせて、自動的にアニメーションやライティングを調整した上で、アクターを削除して合成します。
Wonder StudiosのAIは手作業によるVFX作業を大幅に自動化し、アーティストはクリエイティブな作業に時間を費やすことができるようになります。また、すでに使用しているソフトウェアに出力したデータをエクスポートすることで、さらに修正を加えることができます。
Wonder Studioの機能の特徴(メリット)
Wonder Studioは、その革新的な機能により映像制作のプロセスを大幅に簡素化し、高品質な結果を迅速に提供します。その主なメリットを以下に詳述します。
実写の人間を簡単にCGキャラに置き換えられる
Wonder Studioの最大の特徴は、実写の人間を簡単にCGキャラクターに置き換えることができる点です。これは、映像制作における時間とコストを大幅に削減することが可能となります。
前述の通り、Wonder StudioのAIがリアルタイムでアクターの動きを追跡し、その動きをアニメーションに変換します。これにより、リアルタイムでのキャラクターの動きの制御が可能となり、より自然な動きのCGキャラクターを作成することができます。
Wonder Studioではキャラクターのモデルが最初からいくつも登録されていますが、オリジナルのキャラクターモデルを利用することもできます。キャラクターモデルを追加する方法については、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。
専用機材なしでモーションキャプチャーができる
Wonder Studioは専用のモーションキャプチャー機材を必要としないのも魅力の1つです。一般的なビデオカメラやスマートフォンのカメラからの映像を利用して、モーションキャプチャーを行うことができます。
これは、映像制作の利便性やコスト削減に大幅に貢献します。高価なモーションキャプチャー機材を購入する必要がなく、手軽にモーションキャプチャーを利用することが可能となります。これにより、より多くのクリエイターが映像制作に参加でき、その結果、より多様な作品が生まれる可能性を秘めています。
複雑な作業工程を1クリックで完結
Wonder Studioはモーションキャプチャーからアニメーション作成、そして合成までの複雑な作業工程を1クリックで完結させることができます。通常、モーションキャプチャーは専用機材を用いて記録し、3DCGソフトでキャラクターモデリングを行ってアニメーションを作成し、合成ソフトで実写合成を進めていきます。この工程は普通いくつものソフトと専門の技術を持った人が必要でしたが、Wonder studioのみによって映像制作が可能になり、革新的なソフトであると言えます。
また、技術的な知識がないユーザーでも簡単にCGキャラクターの映像制作を行うことができます。この機能により、映像制作の工程を大幅に短縮することが可能となります。
制作時間が短縮され、より多くの時間をクリエイティブな作業に費やすことができるのです。
Blender形式の書き出しにも対応
Wonder Studioは、人気の3DCGソフトであるBlenderとも連携が可能です。作成したCGキャラクターやアニメーションをBlender形式で書き出すことができるのもWonder Studioの強みです(ただし、PROプランで契約しているユーザーに機能が限定されます)。
これにより、ユーザーはBlenderを使ってさらに詳細な調整や編集を行うことができます。また、Blenderには強力なコミュニティが存在しており、多くのチュートリアルやリソースが利用可能です。
これにより、Wonder Studioで書き出したデータの使用中に問題が発生しても、解決の為の情報を収集しやすいと言えます。そのため、より高度な3Dモデリングやアニメーションを行いたいユーザーにとって非常に有用です。
Wonder Studioの注意点(デメリット)
Wonder Studioは多くのメリットを持つ一方で、いくつかの注意点やデメリットも存在します。ここからはその注意点やデメリットについて解説します。
レンダリングの時間制限がある
Wonder Studioは契約プランによって、レンダリングによる時間制限が設けられており、定められた時間分のレンダリングしかできません。
(動画の書き出しにかかるレンダリング時間ではありません)
具体的には下記の制限が設けられています。
- LITEプラン:150秒
- PROプラン:600秒
つまり、上記の秒数しかWonder Studioの機能を活用した動画制作ができないということです。
これは、Wonder Studioがクラウドサービスであることが原因です。
ただし、Wonder Studio運営によると、新しいサーバーに移管することでクラウドのコストを下げる予定であることを公式Discordにてアナウンスしています。そのため、今後はこの制限が次第に緩和される見込みです。
【8/14:追記】
レンダリングタイムの制限が緩和され、PROプランでは510秒から600秒に変更されました。
オリジナルモデルを追加するのが難しい
また、オリジナルの3DモデルをWonder Studioに追加するプロセスは、初心者にとってはやや複雑に感じられるかもしれません。特定のフォーマットや命名規則に従う必要があり、これには一定のCGスキルに関する知識と経験が必要です。
しかし、一度理解してしまえば、自由にオリジナルの3Dモデルを追加し、それを使って映像を作成することができます。
プロ向けのソフトのため料金が高い
最後に、Wonder Studioはプロフェッショナル向けのソフトウェアであるため、その料金は一般のユーザーにとってはやや高いかもしれません。しかし、その高度な機能と効率性を考慮すれば、その価格は十分に妥当と言えるでしょう。また、異なる料金プランが用意されており、ユーザーのニーズに合わせて選択することができます。
具体的な料金プランについては次項で解説していきます。
Wonder Studioの料金プラン
Wonder Studioは、ユーザーのニーズに応じて3つの異なる料金プランを提供しています。それぞれのプランの詳細を以下に説明します。
LITEプラン
LITEプランは、個人がWonder Studioを手軽に試せるもので、生産性を向上を体感できる最適なスタータープランです。このプランは月額$16.99(年間契約時)または$19.99(月々の契約時)で、以下の機能が含まれます。
- 最大エクスポート解像度:1080p
- ストレージ:5GB
- 処理可能なビデオの長さ(月間):150秒
- 最大の動画アップロードサイズ:500MB
- カスタムキャラクターアップロード数:月間6体
- モーションキャプチャー可能な人数:2人
- モーションキャプチャデータのエクスポート:可能
- 商用ライセンス:あり
PROプラン
PROプランは、Wonder Studioをさらに幅広く使いこなしたり、スピードアップしたいプロフェッショナル向けのプランです。このプランは月額$84.99(年間契約時)または$99.99(月々の契約時)で、以下の機能が含まれます。
- 最大エクスポート解像度:4K
- ストレージ:80GB
- 処理可能なビデオの長さ(月間):510秒
- 最大の動画アップロードサイズ:2000MB
- カスタムキャラクターアップロード数:月間15体
- モーションキャプチャー可能な人数:4人
- モーションキャプチャデータのエクスポート:可能
- Blenderシーンのエクスポート:可能
- クリーンプレート(人物削除)のエクスポート:可能
- アルファマスクのエクスポート:可能
- PNGのエクスポート:可能
- 商用ライセンス:あり
ENTERPRISEプラン
ENTERPRISEプランは、組織のニーズに合わせてスケーラビリティ、セキュリティ、制御、サポートのレベルを提供するためにカスタマイズされたプランです。このプランには、PROプランのすべての機能に加えて、以下の機能が含まれます。
- レンダリング時間制限の調整
- 高度なセキュリティとコンプライアンス
- ストレージの調整
- カスタム個別要素
- キャラクターアップロード制限の調整
- 優先サポート
ENTERPRISEプランの料金は、ニーズに応じてカスタマイズされます。詳細については、Wonder Dynamicsのセールスチームにお問い合わせすると良いでしょう。実際に問い合わせたところ、1日以内に返信が来ました。
Wonder Studioの活用シーン
Wonder Studioの高度な機能と利便性は、さまざまな映像制作シーンで活用できます。以下に、その具体的な活用例をいくつか紹介します。
なお、Wonder Studioの具体的な使い方やテクニックについては下記の記事で解説しています。ぜひこちらもご覧ください。
CGキャラクターの出る動画(Vtuber)
CGキャラクターの出る動画において、Wonder Studioはかなり強力なツールになること間違いありません。
たとえば、Vtuberを実写合成することが挙げられます。Wonder Studioのモーションキャプチャー機能を使用すれば、アクターの動きを追跡し、それをCGキャラクターのアニメーションに変換することができます。これにより、Vtuberのキャラクターは自然な動きを見せることができます。
これまではバーチャル空間での配信などがメインだったVtuber動画も、実写合成を活用した動画も増えてくると考えられます。
ただし、Wonder Studioはライブ配信には対応していないので、リアルタイムのVtuber動画には不向きと言えます。
着ぐるみやスーツが必要な動画(特撮)
Wonder StudioでCGキャラクターに置き換えることができるため、着ぐるみやスーツが必要な動画でも活用可能です。
そのため、特撮の映像制作においても、Wonder Studioは大いに役立ちます。特撮映像では、大抵の場合、アクターが着ぐるみや特殊なスーツを着用して演技を行います。しかし、これらの衣装は高価で、演技を制限することがあります。
Wonder Studioを使用すれば、アクターの動きをCGキャラクターに変換し、それを実写映像に合成することができます。これにより、制作コストを削減し、アクターの演技の自由度を高めることができます。
さしずめ、スーツアクターではなく、バーチャルアクターとも言えます。
少ない人数でのCG動画(個人制作)
CG動画の制作には、3DモデラーやCGクリエイター、VFXアーティストなど、人数が必要になるものです。Wonder Studioは制作工程を大幅に短縮できるため、少ない人数でもCG動画の制作が可能です。
また、モーションキャプチャーも従来の大きなスタジオで、全面グリーンバックにするなど大掛かりな撮影にする必要がありました。それをAIの力で自動でモーションキャプチャーができ、CGキャラクターに置き換えられるのは革新的です。
これにより、個人のクリエイターでもCG動画制作の敷居が下がったと言えるでしょう。
オリジナルモデルの追加方法
Wonder Studioでは、自分で作成したオリジナルの3Dモデルを追加して使用することが可能です。その基本的な手順は以下の通りです。
まず、Wonder Studio上で新しいプロジェクトを作成します。
次に、実写映像からCGキャラクターに置き換えるためのアクターを選択します。
「My Characters」タブから「+」を選択し、アバターの名前を入力して「Create」を選択します。その後、Blenderで作成したオリジナルの3Dモデル(.blendファイル)とテクスチャの.pngファイルをアップロードします。
このプロセスは比較的簡単に行うことができます。難しいのは、Wonder Studioで読み込める3Dモデルを作成することです。
3Dモデルの作成には、一定の3Dモデリングスキルやリギングの知識、英語を読み解くスキルが必要となります。また、Wonder Studioで使用できるモデルは人型(二足歩行)であること、アクターが持っていない部位(例えば尻尾など)は非対応であること、アクターとモデルの体型差が大きいと難しいことなど、いくつかの条件があります。
詳細な手順や注意点については、こちらの記事をご覧ください。
Wonder Studioを活用して映像制作に役立てよう!
Wonder Studioは、その高度なAI技術により、映像制作の新たな可能性を開きます。実写の人間を簡単にCGキャラに置き換えることができ、専用機材なしでモーションキャプチャーが可能であり、複雑な作業工程を1クリックで完結させることができます。また、オリジナルの3Dモデルを追加することも可能です。
しかし、その一方で、レンダリングによる時間制限やオリジナルモデルの追加の難しさ、プロ向けのソフトであるための高価さなど、いくつかの注意点もあります。それらを理解し、適切に対応することで、Wonder Studioを最大限に活用し、より高品質な映像制作を実現することができます。
私たちTeam HENSHINでは、Wonder Studioをはじめ最先端のAI動画制作/編集ソフトに関して、積極的に情報収集を行い、動画制作に活用しています。CG制作に精通しており、Wonder Studioの使い方からオリジナルモデルの追加方法まで、あなたがWonder Studioを使って映像制作を行う上で必要な知識と技術を提供できます。
Wonder Studio公式ではありませんが、何か困ったことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。一緒に映像制作業界を盛り上げていきましょう。