VFXとは?CGとの違いや映像制作における特徴、学び方について解説
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映像作品のクオリティを大きく左右するのが、「どこまで現実に近づけるか」「どこまで想像をかき立てるか」です。近年、この両方を一気に高いレベルで実現する「VFX(Visual Effects)」が注目を集め、ハリウッドの大作映画から個人制作の短編動画まで、幅広く活用されています。
本記事では、VFXの基礎知識やCG・SFXとの違い、主要なVFXソフトの特徴、そして初心者が学び始めるための具体的なステップをご紹介します。
映像制作の世界に一歩踏み込んでみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
映像制作のプロが使う技術「VFX」とは
VFX(Visual Effects)とは、映画やドラマ、CM、ゲームなどの映像制作の現場で多用される技術です。実写映像とデジタルエフェクトを組み合わせることで、現実では表現しきれない映像効果を生み出すことができます。
たとえば、大迫力の爆発シーンや超自然的な演出、ファンタジー世界の再現など、VFXは物語の世界観を広げる強力な手段として機能します。
映像制作のプロだけでなく、近年では個人クリエイターや小規模チームでもVFXを活用する機会が増え、作品のクオリティを大幅に向上させる要素として注目されています。
CGとVFXの違い
CG(Computer Graphics)はコンピュータで作られた画像や映像全般を指す用語で、静止画や3DCGアニメーションなど幅広い領域をカバーします。
一方、VFXは実写映像とCG要素を合成・編集して、よりリアルかつ印象的な映像を作り出す技術です。
つまり、CGがパーツや素材そのものを指す場合が多いのに対し、VFXはその素材を映像に組み込み、効果的に表現する工程に焦点を当てています。
SFXとVFXの違い
SFX(Special Effects)は、撮影現場で行う物理的・機械的な特殊効果(爆破や煙、ミニチュア撮影など)を指します。
一方、VFXはデジタル技術を用いて、ポストプロダクション(撮影後の編集工程)で映像を加工・合成する手法です。
SFXが実物を使ったアナログな手法であるのに対し、VFXはコンピュータを使った合成技術といえます。作品によってはSFXとVFXを組み合わせ、より迫力のある映像表現を目指すケースも多く見られます。
VFXが注目される背景と歴史
VFXは、映画産業の発展とともに技術面で大きく進化してきました。初期はミニチュアや手描き合成が主流でしたが、CG技術の向上により『ジュラシック・パーク』や『スター・ウォーズ』シリーズのような大スケールの世界観をリアルに表現できるようになったのです。
近年では、「ゴジラ-1.0」が少人数体制で製作されながらもアカデミー賞を受賞し、その圧倒的な映像表現を支えたのもVFXによるものです。
さらに、ゲームエンジンの活用やバーチャルプロダクションなど、リアルタイム性の高い手法が登場し、映像制作の可能性はますます広がっています。
主要なVFXソフトの種類
VFXを活用するには専用ソフトが必要です。各ソフトには得意分野や操作性、価格帯の違いがあり、制作する映像のジャンルや目的によって最適なソフト選びが重要になります。
業界でも有名なVFXソフト
VFX制作において実績と知名度が高いのは、After Effects、Blender、Houdini、Maya、3ds Maxなどです。ここでは、それぞれの特徴や得意分野をご紹介します。
Adobe After Effects:コンポジットやモーショングラフィックスに最適
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Adobe After Effectsは、レイヤーを重ねて映像を合成(コンポジット)したり、文字や図形を動かすモーショングラフィックスを作成したりするのに適しています。PhotoshopやPremiere Proとの連携もスムーズで、映像編集全般に幅広く対応できる点が魅力です。
直感的なインターフェースが特徴で、初心者でも取り組みやすく、チュートリアルやプラグインが豊富なため、独学しやすい環境が整っています。
Blender:無料で3Dからコンポジットまで幅広く対応
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Blenderはオープンソースの3Dソフトウェアとして注目を集めており、無料にもかかわらず3Dモデリング、アニメーション、レンダリング、さらには2Dアニメーションまでカバーできます。
コンポジット機能も備えているため、オールインワンで映像制作を行うことが可能です。
エフェクトやシミュレーション機能も充実しており、個人クリエイターからプロのスタジオまで幅広く活用されています。
Houdini:パーティクルやシミュレーションエフェクトに強い
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Houdiniは、複雑なパーティクル表現や流体シミュレーション、破壊表現などの高度なエフェクト制作に強みを持つソフトウェアです。プロシージャル(手続き型)なアプローチを採用しており、ノードベースでの作業により再現性や応用が利きやすいのが特徴です。
大規模な映画制作やCM、ゲームなどで使われており、本格的なVFX表現を追求したい方にとっては非常に強力なツールとなります。
Maya/3ds Max:ハイエンド3Dアニメーション制作に強み
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Mayaと3ds MaxはいずれもAutodesk社の製品で、ハリウッド映画やハイエンドなゲーム開発でも多数の実績を誇ります。
3Dモデリングやリギング、アニメーション機能が充実しており、リアルなキャラクターや大規模なシーン制作に適しています。プラグインも豊富で、他のソフトと組み合わせることで柔軟性が高まるのも魅力です。
映像制作の現場で幅広く使われる定番ソフトといえます。
VFXソフトの選び方のコツ
VFXソフトを選ぶ際は、制作したい映像のジャンルや予算、動作環境などを考慮することが重要です。以下のポイントを押さえておくと、自分に合ったソフトが選びやすくなります。
ライセンス形態(買い切りorサブスク)
VFXソフトには買い切り型と月額サブスクリプション型があります。
たとえば、Adobe After Effectsは月額制のCreative Cloud、Blenderは無料、HoudiniやMayaは有料ライセンスとサブスクの両方を用意しています。
定期的にバージョンアップするソフトも多いため、コストの見積もりや支払い方法を含めたライセンス形態をしっかり確認しておくことが大切です。
必要なPCスペックと拡張性
VFXソフトは、CPUやGPUに大きな負荷をかける場合が多く、高性能なマシンほど作業効率が上がります。特に、3Dレンダリングや流体シミュレーションなどはメモリを大量に消費するため、最低でも16GB以上のRAMを推奨するソフトが少なくありません。
また、GPUレンダリング機能を利用する際は、NVIDIA製のグラフィックスカードが推奨されることも多いです。
プラグインやアドオンを追加する拡張性を考慮すると、自分が目指す制作レベルに合ったPC環境を整えておくことがポイントです。
ユーザーコミュニティやサポートの充実度
VFXソフトによっては、公式フォーラムやユーザーコミュニティ、学習サイトが充実しているものがあります。英語圏だけでなく日本語対応の情報が手に入りやすいかどうかも重要です。
困ったときに質問できる場やチュートリアル動画が豊富だと学習スピードも格段に上がるため、最終的にはサポート面を重視してソフトを選ぶのも一つの手です。
映画からゲームまで幅広いVFXの活用事例
映画やドラマだけでなく、CMやWeb動画、ゲームの世界でもVFXが活かされています。ここからは、実際の作品例を交えながら、VFXが映像表現にどのようなインパクトをもたらしているのかを見ていきましょう。
映画・ドラマでのVFX事例
近年、多くの作品でVFXが活躍し、壮大な世界観をリアルに表現しています。たとえば、下記の動画で紹介されている映画『ゴジラ-1.0』では、わずかな人数で製作を進めながらも、爆発や建物の破壊などダイナミックな演出をVFXで実現。圧倒的な迫力が作品全体を彩り、視聴者に強いインパクトを与えています。
下記はNetflixのドラマ『寄生獣』のメイキングシーンです。人体が部分的に崩れて寄生獣に変貌する表現や、車に乗った状態での戦闘シーンをVFXで彩っています。
他にも、現実の風景を加工して異世界や未来都市を描くなど、VFXが欠かせない存在になっています。
CM・Web動画・ゲームでの応用
CMやWeb動画では、製品を印象的に演出するためにVFXが活用されることが増えています。
下記の動画は『味の素』のCMになります。商品を引き立たせるための魅力的なストーリーで視聴者を引き付け、最後に商品のプロモーションを入れて締めくくっています。
VFXが用いられる手法として、商品を分解して中身を可視化したり、商品の効能を示す役割を担うことも多いです。下記は『ダイソン』のCMで、VFXによってコードレスクリーナーの性能を示したものになります。
また、ゲーム内でも迫力ある爆発や魔法効果など、リアルタイムVFXが注目されており、プレイヤーの没入感を高める大きな要素となっています。
下記の記事は、『ファイナルファンタジー14』でVFXアーティストを務めた石井隆康さんのインタビュー記事です。ゲーム内のエフェクトがどのように制作されているかがよくわかります。
▶ FF14バックステージ調査隊⑧VFXアーティスト:石井隆康さん | ファイナルファンタジーXIV: 公式ブログ
Team HENSHINのVFX制作事例
ここでは私たちTeam HENSHINが実際に制作した事例をご紹介します。
映画『幕末陰陽師・花』では、戦闘シーンにおける演出をVFXで再現しました。シーンによって演出が異なるため、監督からイメージを詳しくヒアリングした上で、理想的なシーンになるように仕上げました。
Vtuberと特撮をかけ合わせたドラマ『VARZ』です。変身シーンでは、実写の人物映像からCGのキャラクターに徐々に変化させるようなVFXに仕上げています。
変身シーンの後にある戦闘シーンでも、銃の演出や敵が倒れる際のエフェクトをVFXで表現しました。
こちらは人気YouTuberの『マナル隊MANARUTAI』チャンネルでの事例になります。
地面が裂ける演出をVFXで表現しています。裂ける際の土煙や石などを動画内に合成するのに加えて、裂けるのに合わせて上手く背景をずらすなど細かい編集も行っています。
Team HENSHINで運用している『テラ』チャンネルでは、白線以外の部分が崩れ落ち、白線の上だけを移動するというコミカルな動画に仕上げました。
地面が崩れる演出をVFXで行い、元素材の動画と合成しています。
VFX初心者の学習方法
VFXを学ぶには、映像編集の基礎から合成や3Dモデリングまで、段階的に取り組むことが効果的です。下記のステップを参考に、徐々にスキルを習得していきましょう。
学習のおすすめ4ステップ
映像編集ソフトの基本操作から合成、3Dへの応用まで、無理なく進めるための4つのステップをご紹介します。それぞれの工程をしっかり押さえると、VFX全体の理解が深まります。
まずは映像編集ソフト(Premiere Proなど)での基礎操作を身につけましょう。映像の切り貼りやテロップ挿入、音声のレベル調整などを行い、タイムラインの概念やカットの繋ぎ方を体験的に学ぶことが大切です。
音楽や効果音の配置も含め、視聴者にストレスなく映像を見せるためのベース作りを覚えましょう。ここで習得した編集技術が、その後のVFX処理の前段階として大きく役立ちます。
次に、After EffectsやBlenderなどを用いて、簡単なアニメーションやエフェクト合成に挑戦します。たとえばタイトルの文字を動かす、発光やスモークなどのエフェクトを加えるといった作業です。
レイヤーの概念やキーフレームの操作に慣れることで、合成処理の理解が深まります。
また、プラグインやエフェクトのパラメータを調整し、思い通りの表現に近づける過程で、VFXに必要な応用力を磨くことができます。
実写トラッキングとは、撮影した映像のカメラ動作や被写体の動きを解析し、CGや文字などを正確に重ね合わせる技術です。たとえば道路を走る車の映像に、走行速度や進行方向を示すグラフィックスを自然に合成する場合などに使われます。
トラッキング精度が高いほど、合成物が実写に溶け込んだ表現になり、違和感のない映像作りが可能です。
こうした工程を習得すると、作品全体のクオリティが大きく向上します。
最後のステップとして、実写と3Dモデルの合成を行います。BlenderやMayaなどで作成した3Dオブジェクトを実写映像に配置し、ライティングやシャドウ(影)を調整してリアリティを追求します。
この工程では、3D空間やライティングの概念を理解しているかどうかが重要なポイントです。質感や物理演算を使いこなすと、キャラクターやメカニックを現実世界に存在しているかのように演出できるようになります。
【タイプ別】学習の進め方
学習スタイルは人それぞれ異なります。短時間で手軽に始めたい人もいれば、じっくり深く理解したい人もいるでしょう。自分に合った方法を選ぶことで、学習効率はぐんと高まります。
手軽にVFXを始めてみたい方向け
YouTubeなどに数分~数十分程度の短いチュートリアル動画が多数公開されています。1つ1つの動画を見て実際に試してみることで、手軽にVFXの基礎に触れられます。
難しい理論を先に勉強するよりも、まずは手を動かしながら画面上での変化を体験してみるのがおすすめです。空き時間を活用して気軽に取り組める点も魅力です。
VFXの理解をみっちり深めたい方向け
より体系的に深い知識を得たい場合は、Udemyなどのオンラインコースで数時間~十数時間にわたる講座に取り組むのがおすすめです。
映像制作に特化したスクールに通うのも有効な選択肢です。カリキュラムに沿って学ぶことで、実践的なプロセスや応用力が身につきやすく、プロからのフィードバックを受けながら効率よく上達できます。
実践に役立つチュートリアルをご紹介
VFXをよりスムーズに習得したいなら、オンラインやオフラインのチュートリアルを活用するのがおすすめです。例として、下記を勉強の進め方として参考にしてみてください。
- オンラインチュートリアル(公式サイトやYouTube、Udemyなど)
- 書籍
- 専門スクール
- コミュニティ参加
このようにVFXの学習には多彩な選択肢があります。SNSやコミュニティに参加すれば、疑問点を質問したり、他の学習者の作品事例を参考にしたりできるので、モチベーションを維持しやすいでしょう。
おすすめ教材をスタッフが厳選!
ここからは私たちTeam HENSHINのスタッフが実際に勉強した教材をご紹介していきます。
まずは映像制作業界でも有名なYouTubeチャンネル「サンゼの After Effects 教室」さんです。After Effectsの技術に関して幅広く解説しています。
弊社スタッフが特に勉強になった動画をいくつかピックアップしてご紹介します。
また、日本国内と比較して、海外ではより多くの情報が発信されています。英語での説明になりますが、下記のチャンネルも参考になりました。
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(英語版で学習する際は、英語版の表記と照らし合わせれば学習にも役立つはずです)
表記早見表 参考:After Effects【英語版】エフェクト一覧 早見表 | eizou_world
YouTubeでもさまざまな情報が発信されていますが、無料で体系的に学習するのであれば、VIDEO COPILOTのチュートリアルもおすすめです。
何年も前の動画にはなりますが、VFXの基礎や仕組みから学びたい方はじっくりと取り組むのにはよいでしょう。
本格的なVFXのエフェクトだと敷居が高い方は、モーショングラフィックスやテキストアニメーションなどから始めることもおすすめです。
下記の動画では、基礎の基礎から解説していので、こちらもぜひご覧ください。
VFXをやっていると、3Dアニメーションなどにも手を伸ばしたくなるでしょう。その際は、Blenderにも挑戦してみることをおすすめします。インタフェースや勉強すべき内容はAfter Effectsとはまた大きく異なります。Blenderもまずは基礎から始めて、さまざまなチュートリアルを試してみるとよいでしょう。
Blenderに特化したチュートリアルは、YouTubeチャンネル「3D Bibi」さんがおすすめです。
Team HENSHINでもAfter Effectsをはじめとする、クリエイターの学びになるYouTubeチャンネルを解説する予定です。こちらもぜひ楽しみにしていてください。
VFXを学んだ先のキャリアパス
VFXを習得すると、映像制作やゲーム開発、広告業界、さらにはVR/AR(XR)領域など、さまざまな分野で活躍の幅が広がります。
映画スタジオやゲーム企業での専門職だけでなく、フリーランスとして企業のPR動画やWebコンテンツを手がける道もあります。
また、リアルタイム3D技術が進化している現在、VFXの知見はバーチャルプロダクションやメタバース関連のプロジェクトでも欠かせない存在です。創造性とテクノロジーを融合させるVFXは、今後ますます需要が高まるでしょう。
VFXで映像作品を彩る!
VFXは映像制作において、作品の世界観やクオリティを飛躍的に向上させる強力な武器です。CGやSFXとの違いを理解し、適切なソフトを使いこなすことで、誰でも魅力的な映像表現にチャレンジできます。
学習ステップや活用事例を参考に、まずは小さなプロジェクトから始めてみましょう。VFXの可能性を広げることで、自分の映像作品をより彩り豊かに仕上げられるはずです。
Team HENSHINでは、誰もがクリエイターになれるような環境を整えることをミッションに掲げて、このように発信しています。
VFX以外にも、動画編集/映像制作に関することやCGやAIに関することまで幅広く発信しています。ぜひ他の記事もご覧ください。
一緒に活動するクリエイター志望の方や前線で活躍しているクリエイターの募集、制作に関するお仕事も募集しています。ご興味のある方はお問い合わせページからご連絡をお待ちしています。